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第56回人権交流京都市研究集会

  3分科会

多文化共生と教育

「外国籍および外国にルーツのある児童生徒の

学びの保障を考える」

                        会場 視聴覚研修室

               

      

実態調査報告

「外国籍および外国にルーツをもつ児童生徒に関する実態調査2022」の報告

山口 寛人(京都市小学校外国人教育研究会)

実践報告

「学びの保障〜在留資格と府高校生等修学支援事業奨学金から考える〜」

 中山 美紀子(京都市立開睛小中学校)

 

実態調査報告、実践報告を受けて

 京都市立学校における外国人教育の「今」

中島 智子(元プール学院大学) 

外国ルーツ高校生の修学及び進路をめぐる課題

 今井 貴代子(大阪大学)    

 

パネルディスカッション

 

コーディネーター 李 大 佑(京都市立中学校教育研究会人権教育部会)

 パネリスト    中島 智子(元プール学院大学)

           今井 貴代子(大阪大学) 

           中山 美紀子(京都市立開睛小中学校)

           山口 寛人(京都市小学校外国人教育研究会)

 

分科会責任者   土岐 文行(京都市立中学校教育研究会人権教育部会)

庶 務      高橋 俊行(京都市立中学校教育研究会人権教育部会)

司 会      李 大 佑(京都市立中学校教育研究会人権教育部会)

記 録      前田 恵美(京都市小学校同和教育研究会)

  

 

 

 第3分科会(多文化共生と教育)は、「外国籍及び外国にルーツのある児童生徒の学びの保障を考える」をテーマに、小学校及び中学校外国人教育研究会が行った「外国籍および外国にルーツをもつ児童生徒に関する実態調査2022」(以下:実態調査)の結果とそこから明らかとなった課題、現在の外国籍・外国にルーツのある生徒の実態を踏まえ、ディスカッションを行った。

はじめに、外国籍児童生徒の在留資格について、学校がどの程度理解されているのかについて、山口寛人さんから報告があった。在留資格によっては、奨学金を受けられないことがあり、在留資格を学校が正しく把握することは、児童生徒の進路保障において、必要な情報であることが報告された。

 つづいて、中山美紀子さんより、日本語教室で、学びを止めない、子どもの自己実現を支えることを意識した教育実践を通して感じる、現在の課題を示された。

学習保障の視点では、日本で学習するには、まず日本語を学んでから、教科学習という発想を脱し、「母語」の力を活かす、視覚支援をする、ICTを活用する、短く的確な優しい日本語で話す、重要語句にはフリガナをつけるなどの工夫を通して、日本語ができなくても教科学習を同時並行で行っていく必要があるとした。

 また、外国ルーツの児童生徒の肯定的なアイデンティティの形成と保持については、絶対的なマジョリティが、マイノリティは声を上げにくいことを理解し、声を上げやすい環境をつくることを忘れてはいけない。

 また、児童生徒の背景や経済面についての配慮と支援については、就学援助や就学資金等を受ける際には、在留資格の種類で違いがあり、必ず在留資格の種類を聞いておかないといけない。また、近くに日本社会ロールモデルがないため、日本の教育制度やキャリア形成の在り方については、丁寧に保護者、児童生徒に説明する責任があると述べられた。

実態調査・実践報告を受け、今井貴代子さんから、外国ルーツ高校生の就学及び進路をめぐる課題について、以下の点について報告があった。

 現在、340万人を超える在留外国人が日本社会で共に生活している。最近は中国、ベトナム、韓国・朝鮮に加え ネパールもミャンマーからも増えている。渡日の目的については、技能実習者、留学、家族としての滞在など多様である。特記すべきことは、新型コロナウイルスによる移動規制終了後、家族滞在の在留資格での子どもが急増している。

また日本語指導を必要とする高校生の中退率は7.7倍 就職する時の非正規就職率は12.5倍であり、憂慮する事態である。この点を、教育としてどう考えるのか、何をしなければいけないのか、ますます重要なテーマとなっている。更に、多様性を教室にどれだけ担保できているのか、これはアイデンティティ自尊感情の育成に大きな影響があり、ひいては進路保障にもつながる大きな問題である。

これまで関西を中心とする学校で積極的に行われてきた在日韓国朝鮮人の教育で大事にしてきたことを、今後、継承発展していくことが求められるとした。

  つづいて、「京都市立学校における外国人教育の“今”」をテーマに中島智子さんから問題提起があった。

京都市の在日外国人教育、主に在日韓国朝鮮人教育の歴史とその成果を振り返り、現在のニューカマーとされる児童生徒及びその保護者に対して、これまで行ってきた同和教育や在日韓国朝鮮人に対する教育を、どのように活かしていくのかが問われているとした。

 また、研究会が実施した実態調査については、「調査と取組との関係はどうなっているか。調査結果を踏まえたうえで、取り組みにどうつながっていくのか。」「質問に教師はどうやって回答したのか。外国籍全体、国籍別にそれを考えるのは難しいか。その判断は教師がどうやってするのか(調査の難しさ)。外国人児童生徒が原因とみなされないか。自由記述欄を設けることで様子を詳細に把握できるのではないか。」「市立高校はなぜ対象になっていないのか?」と、調査の課題と今後の改善点について、示された。

 

 つづいて、問題提起を頂いた4名の方によるパネルディスカッションを行った。パネルディスカッションは、フロアから事前に頂いた質問に答える形で実施した。

  パネルディスカッションで示された内容は以下の通りである。

中島さんからは、

       ブラジルの日系人、フィリピン人も それぞれの歴史的背景がある。それを丁寧に見ていく必要がある。

       ニューカマー児童生徒教育については、在日韓国朝鮮人が背負わされている課題や矛盾をそのまま背負わされていないか?特別の配慮はしないということが今も残るその原因か?

       戦後公教育における在日韓国朝鮮人に関する教育はなかった。それが1991年の日韓覚書を踏まえ、文科省が韓国語、韓国文化の配慮を言い、それを「拡大解釈」して、民族学級をもとにして他の外国人児童にも使っている。在日韓国朝鮮人教育で培ってきたものを、ニューカマー児童生徒にも更に広げていく必要がある。

       文科省は、教員採用試験に国籍条項を外し、すべての外国籍の人に採用される権利があるとした。現在、外国籍の教職員の現状はどうなっているのか、丁寧に検証する必要がある。

 

今井さんからは、

       高校の先生方も大変な思いをしている。プレスクールで一定期間、日本の学校文化を知る。はじめに必要な日本語などを10日間学び、学校に戻るということも大阪でしている。現在大阪市内にはプレスクールが4拠点ある。悲観的になるより、「こんなことしよう!」と言うように施策ができていくとよいのでは。

       母語の力を活かす支援をすすめたい。評価者の力量を高めることも必要。外国語の作文をだれが評価するのか。ある学校では大学の先生などプロに評価してもらっている。留学生などの資源を使うことも必要である。

       母語を活かすことに加え、母語を承認することから始めるのが大事ではないか。

       大阪も特別枠校に入っていた子どもが、大学まで卒業し、コーディネーターとして役所で仕事をしている。そういうロールモデルがどんどん増えれば嬉しい。

 

中山先生

       京都市ではプレスクール若葉を今年小学校6年生にも拡大した。日本の学校はこんなことだということを知ってから、本校に返る取り組みをしている。

       日本語担当教員は増えてきているが、来る子どもたちの数が急増していて、2024年は700人近くになっており、間に合っていない。待機してもらっている学校も多い。若葉に行った子どもは週2回、それ以外は週3回、指導に回っているが、週1回しか行けていない現状もある。在籍学級の先生への訴え、日本語指導の先生が橋渡しはするが、在籍学級で過ごすことが多いので、そこでの支援が大きなカギになってくる。京都市でも研修が年6〜8回あるので、ぜひ一緒に受けてほしい。夏休みの研修は在籍学級の教師のためのもの。

       同じ問題によっても解き方が国によっても違う。日本の方法ではなくても、答えがあっていればよい。出来ていない子どもには日本式で、教えてもよいのではないか。

       授業料無償化の話。高校は授業料以外にかかるお金が多い。私立 127万4040円・・・・公立高校 はっきり明示しない。授業料は安いが、教科書代がかかる。制服代、修学旅行費、教材費などの問題が解決しているわけではない。

 

山口先生

       学力に課題がないと答えている教職員が多い。しかし、「明らかに課題があるのに」と感じる。ただ外国籍及び外国にルーツのある児童生徒間においても、格差が広がっているのも事実である。

       外国籍以外の子ども以外でも学校差、個人差がある。日々の授業が分かりやすいものになっているかを一番に考えていくことが、学力格差をなくしていくことになると考えている。

       今回の実態調査について 一般の教職員に伝わることがないのが残念。各校2冊ずつわたっている。外国人教育主任が読み取って伝えていくことが大事。いろんな場所で紹介していくことが大事である。

       家庭訪問がどんどん減ってきており、ルーツがあるかどうかをとらえるのがとても難しくなっている。日々の人間関係の関わりの中で感じていくものであり、その上での調査であって欲しい。

 

 フロアからも多くの質問や意見が出され、大変活発な分科会となった。

  

 

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