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 第35回部落解放研究京都市集会

第7分科会  解放教育U 「他者との共生をめざして」 

同和教育から外国人教育・多文化共生教育への道

  司会:土佐雅一・水野博之

記録:若松栄一・金谷直樹

水道会館☆ 参加者数=89人

 

  1:30〜 分科会の流れ、討議の柱、パネリスト紹介
 1:40〜 パネリスト:野原久美子さん・吉村眞由美さん(京都市立山王小学校)

       実践報告「アンニョンハシムニカ」
 2:10〜 質疑応答
 2:30〜 パネリスト:李勇煕さん(在日韓国青年同盟京都府本部委員長)
       「李勇煕として生きる」
 3:20〜 質疑応答


■討議の柱と分科会でこれまで話し合ってきたこと


・ 外国人教育基本方針の具現化
・ 総合的な学習の時間と人権教育
・ 新渡日の児童・生徒に対する教育保障
・ 解放教育の新しい展開
・ アイデンティティの問題
・ 互いの違いを認め合う(共生)の視点


■原さん・吉村さん 実践報告内容要旨

 在日韓国・朝鮮人児童が多く在籍する小学校での、4年生の地域を主題にした総合的な学習「アンニョン・ハシムニカ」の実践をお話しされました。
NPO法人 京都コリアン生活センター(エルファ)での在日一世の方々との出会い、交 流が、人権意識を育てていくきっかけとなった。
・学習を積み重ねていくことで、自分が韓国・朝鮮人であることを主張できる子どもが増 えてきた。
・中学校との連携が今後の課題。

〈質疑応答〉
 Aさん…小中連携はとても大切なことだと思う。今後さらに深めていってほしい。もっと子どものつぶやきや思いを聞かせてほしい。また、ダブルの子どもたちのアイデンティティに関わって、どのような姿が見られるのか聞かせてほしい。
 Bさん(山王小)…[小中連携について]中学校との月に一回の情報交換で、一人ひとりの子どもの良さや課題をもとにして何を重点的に取り組んでいるかについて話し合っている。
 吉村さん(発表者)…ダブルの子どもについては、まだ十分にとらえられていないが、二人の子どもについて、
・この学習をきっかけに自分の親のことについて話してくれた。また保護者も語ってくれ た。
・「日本国籍だが、親は韓国人なんだよ」と話してくれた。もっとハングルを学びたくて、 教えてもらいにいっている。この学習を通して意欲を持たせることができた。
 Cさん…通名で通っている児童に対する「本名」への取り組み、名前をどのように考え、取り組まれているのか。
 Dさん(山王小)…本名についての働きかけはしていない。保護者の多様な考えの中で、名前だけにこだわるものではないという考えのもと、子どもの成長段階にあわせて学ばせていきたい。
 Aさん…学校体制としての本名指導のとらえ方を聞きたいのではなく、個々の関わりや担任と児童・保護者との信頼関係の中で名前について話し合うことが大切ではないか。

 Dさん(山王小)…最終的に子どもたちが本名で通えることが大切だと思うので、個々への働きかけについてはしていないということではない。
 Eさん…どういう関係を結んできたのか、担任の先生と子どもの関わりを聞きたい。
 吉村さん…指摘の通り、この学習の中で私自身「名前」の視点をもって進めてはこなかった。民族学級の中でも、仕事上使っている日本名を使わせたいということで通名を名のっている子どももいる。


■李勇熙さん 報告内容要旨

 日本でも本国でも差別をうけたこと。「いったい自分は何者なのか」「この社会に自分の居場所はない」と悩み、自殺を考えるまでに至るが、在日韓国青年同盟での同胞との出会いをきっかけに、自分のアイデンティティを取り戻したことなど、自身のこれまでをお話しいただきました。
・現在の日朝関係が及ぼす、公立の学校に通う少数派の在日韓国・朝鮮人児童への心理的 影響。
・三世四世の世代は日本人に最も近い生き方を選ばされてきた。
・日本は国連からマイノリティのための教育環境が整っていないと勧告を受けている。マ イノリティの子どもを受けとめてあげられる周りの環境を作って欲しい。

〈質疑応答〉
 Fさん…日本社会は今、排外主義が強まっている。朝鮮半島を利用して、日本の進路を決めようとしている。「日本人」として歴史を見つめ直さなければ、過去の過ちを繰り返す。出入国管理事務所のホームページでの不法入国者・滞在者のチェック、拉致問題でも北朝鮮を国家として認めない姿勢、メディアによる北朝鮮報道における下がったトーン。子どもたちに何を伝えられるかを考えていくことが大切。
 李さん…日本社会の矛盾は、アメリカにあると思う。戦後の「天皇制」を残した国づくり、日の丸・君が代を中心とした国。日本が戦争できる国に仕立て上げられることで子どもたちを再び戦争に向かわす教育になっていくのではと懸念される。北朝鮮は悪い国だと決めつけていくことに本当の豊かさがあるのだろうか。

 Gさん(在日保護者)…本名指導を過去のものにしてほしくない。本名指導について先生方の主体性を見せて頂きたい。自分がクラス担任なら、通名で通いたいと本人や保護者が言っても自分がつらい。その自分のつらさを前面に出して関わることが、人間としてのあるべき姿ではないか。本名で通う子どもの存在が通名で通う子どもにとっても影響を与える。少数者が少数者として生き生きと過ごしていけることを大切にしていってほしい。今のニューカマーや在留資格のない外国人は何年か前の在日の姿である。自分が中学生の時の指紋押捺で在留資格のある外国人として日本にいられるということに優越感を感じた。マイノリティの人権を守られなければそのことで他の人権も必ず守られなくなる。

 

 3:50〜 パネリスト:寺井秀登さん(全外教事務局長)
       「反差別・人権の教育保障−在日外国人教育を中心に」
 4:40〜 質疑応答

 


■寺井さん 報告内容要旨

 子どもを取り巻く社会は差別の現実が待っている。またそういう状況の中で日常生活をしている。子ども自ら差別をしてしまう状況をつくっている。そういう状況をしっかりと正面から見据えた上で、何が課題なのか、課題解決にどんなことが必要なのかを見つめていくことが反差別・人権の教育保障につながる。明るい出会いから厳しい現実に出会い直したときに、子どもたちのアイデンティティが崩れることなく維持できるのかが課題である。国内での外国籍の子どもの就学問題、進学率の問題、就職の問題など差別の現状から今後の多文化共生教育の方向・課題について教えていただきました。

〈質疑応答〉
 Mさん…市内の中学校での卒業証書問題。今年度は証書元号刷り込みのものしか発注しなかった。99年の市教委の通達に反する。外国籍の生徒がもらう証書は日本人生徒がもらうものとは違うものになる。責任ある関係者に対して動いたが、責任のなすり合いで、いまだきちんとした返答がない。
 Nさん…李さんの受けたリンチの話は胸が痛む。李さんと同じようなことが何度かあった。これは学校の責任である。例えば1年生の担任の関わりで名前のことを話すことがきちんとできていれば、自分を認め、在日の子と共に生きられる子どもが育っていたのではないか。教師の力量不足もあるが、京都市の教育現場に外国人教育方針や指針が浸透していないことが大きな問題である。また、同和教育が、学力至上主義であり、アイデンティティの確立ということには、教育的価値が少なかったことも一因がある。同和教育の土壌が京都では、外国人教育を育むものと成り得なかった。解放教育を進めるためにも、このことをきちんと総括する必要がある。
 司会…「アイデンティティの確立」についての実践、これは昨年度からの課題でもあった。学校間格差についての問題も大きな課題であろう。
 寺井…現場の声、子どもの声、親の声から教育の方向性を決めて行かなければならない。特区改正案などの制度を利用して、現場から声を上げて本当に必要な物を要求していくことも一つの方法であろう。

 

*感想(アンケートより)

・歴史の残酷さを思います。「違いを豊かさに」変えることを学ばさせていただきました。 山王小の報告について、総合学習で充実したものであれば、個々の子どもの成長や思い をどうしても知りたい。もう一歩踏み込んだ取り組みをしなければ本当に一人ひとりの アイデンティティを確立していくことに繋がらないのではないか。京都も他府県からも っと学ぶ必要がある。

・李さんのお話は、心痛むものでした。在日の保護者の方々から多くのことを教えていた だきながら、在日の子どもたちの心の奥深い部分を、自分は、どれだけわかっていただ ろうか。在日の子どもが本名を使えないのは、日本社会の根本的な問題です。李さんや 在日のお母さんが繰り返し訴えられた言葉を決して忘れることなく、日本社会が間違っ た方向へ進むのを少しでも止められるような人を育てていきたい。

・李さんの報告、心に響きました。学校教育に関わっているものの一人として、在日外国 人の問題を常に忘れることなく、違いを差別することなく、豊かさとして認められる人 間の育成をめざして私自身も学びながら教育を進めていこうと強く思います。

・毎年参加しながら考えさせられる所が多く、自分自身の学習に刺激を与えて下さりあり がとうございます。前向きにがんばりたいです。

・自分が教育を預かる教員として、責任ある立場にあることを、当たり前のことですが、 改めて痛感しました。今後も学びを怠らないようにしたいと思います。

・自分の体験からお話しされたことによって、知り得なかった事を学び取ることができま した。また、様々な立場からの話に、納得したり、「そうなんだ」と感じたりすること ができました。

・討議の時間が少なかった。報告2本でもよかったのでは。問題提起されたことの答えを 作り出そう。

・現在の差別問題に対する取り組みをもっともっと伝えていかないといけないのでは。

・時間が足りなかったが内容が充実していてよかった。

・初めて参加して、とても内容の濃い議論が聞けました。

・教師として同和問題、外国人問題に対して何をしていかなければならないか見えたよう に思います。

・すばらしい発表、意見交換の場で、参加してよかった。今行われている人権教育が形式 的なものになっているように感じました。自分の勉強不足を感じ、学ぶことの多い会で した。

・李さんの話を京都の人権教育の現状として受け取るべきである。李さんが受けた差別や 暴力の責任は、一人ひとりの教師が受け止めなければならないが、方針を出しながら外 国人教育を真剣に進めようとしてこなかった京都市の責任は大きい。人権特区を関係校 や外国人多数校に作るのも一案だと思う。

(PTA)

・李さんのお話に胸を打たれました。知ろうとしない私たちの無関心・無知を恥ずかしく 思います。子どもたちが差別に対して鈍感なことに心痛めています。真の意味で自由な 人間、差別に敏感で差別に不快に思える人間の育成、その具体的な提案を聞きたい。

・差別を受ける側の立場、悲しさを理解できた。見えてないこと、感じてないことが多い。

・李さんは、苦い経験を自分の中で整理され、強い精神力で乗り越えてこられたと思いま す。人間的に魅力ある方だとも思いました。どうぞ個人的な人間的な魅力で周囲の日本 人から尊敬してもらえる人(今もそうかも)を目標にトラウマを取り去ってください。 偏見を持つ人だけではありません。

・在日への差別が今なおひどくあることを知り、悲しく、そのために何かしないといけな いと思いました。山王小のような取り組みが、民族学級を設けていない学校でももっと 必要だろうと思います。もっと小さい頃から取り組み、中学校ではもっと深めて、ただ 思春期なので慎重に取り組んでほしい。学校に押し付けず、PTAや地域も協力するこ とが必要だと思います。

(行政)

・くわしい資料、地域説明があり、好感を持ちました。時代の変化だなあと思いました。 とにかく、祖国統一、民族統一を早く実現してほしい。同和教育から外国人、多文化共 生教育への道をたくさん議題にして討論を活発にしてほしいです。

・第7分科会に参加したが上滑りでなく、腹をえぐり出すような声(話)の連続で驚いた。 互いを理解し合うとは、互いの違いを認めること、「人は違っているもの」とのスタン スでの人間付き合いの大切さを話し合われ、歯に衣を着せぬ話は、時の経つの忘れさせ るもので、来年も参加したい。

・問題点と具体的な事例の羅列に終わったような気がします。どうあるべきか、何を具体 的に取り組むべきなのかの検討に時間をかけないと、結論は出ないでしょう。

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