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 第35回部落解放研究京都市集会

第3分科会   「新たなまちづくりの創造」 

部落の実態が語りかけるもの

                                                                     進行:長谷川良知(部落解放同盟京都市協議会)

   報告@:テーマ「平成12年度京都市同和地区住民生活実態把握事業」について

                奥薗 俊夫(京都市文化市民局市民生活部人権文化推進課)

   報告A:テーマ「住み続けられる魅力あるまち」の実現に向けて

                淀野  実(京都市都市計画局住宅室住宅政策課)

   報告B:テーマ「部落の人口流出から見えてきたもの」

                柳生 雅巳(NPO人権ネットワーク・ウェーブ21理事長)

記録:澤田 忠明(京都市職員部落問題研究会)

担当:山田 康夫(部落解放同盟京都市協議会)

                                                       みやこめっせ特別展示場B   ☆ 参加者数=83人

■ 分科会開催内容

<開催趣旨>

大きく改善されたといわれる「部落の姿」は、今日どのようになっているのか。人口の流出が拍車をかけ高齢化が進み、住環境に比べて教育や就労・産業の面で部落と部落外との間には、依然、無視しがたい格差がある。この現実をよそに新しいまちづくりを考えることはできない。

「まちの恩恵を受けるのは人、被害を被るのも人」という考え方を基本に、今日の部落の実態・現状を視野に入れ、人づくりに向けたまちづくり、そして「新たなまちづくりの創造」に向けて参加者全員で認識を深めていく。

報告@ 「平成12年度京都市同和地区住民生活実態把握事業」について / 奥薗俊夫

  同和地区住民の生活諸実態を的確に把握し、これまでの同和対策事業の効果を測定するとともに、今後の同和問題の解決のための基礎資料として役立てていくことを目的に実施。

1 調査の概要

    調査基準日 2001年1月16日 −人口8,172人、世帯数3,873世帯−

    回答状況  回答世帯数2,831世帯、 回答率73.1%(前回調査から9.0%減)

2 調査結果の特徴(主に1991年調査との比較)

 (1) 人口・世帯等

  ・人口=4,418人(35.1%減)の減。世帯数=1,012世帯(20.7%減)の減。

  ・年齢層別 ピークは65〜70歳層。減少のピークは40〜44歳層。

  ・高齢者等 118人(12.4%減)の増加。母子・父子世帯も相対的増加。

 (2) 住環境=改良住宅割合が80.5%(14.8%増)と高い。

 (3) 世帯収入=高収入層の流出により、低収入層が中核。

 (4) 就労=若年層の就業状態の悪化。

 (5) 教育=保育所39.9%、小学校60.7%、中学校58.2%の激減。

[おわりに]

 京都市では同和問題解決の重要性・緊急性から、属地属人方式による特別施策として同和対策事業を実施。その結果、住環境や生活実態の改善に成果をあげたが、反面、若・壮年で高収入・高学歴層の大量の流出をもたらし、少子高齢の急進と不安定就労・低所得層の増加という現代社会の課題がより顕著に現れたものになっている。

 

報告A 「住み続けられる魅力あるまち」の実現に向けて / 淀野 実

1 同和対策事業と住宅改良事業

<基本的な考え方>

 京都市においては、同和地区の環境改善事業の手法として、住宅地区改良法による改良事業を長年実施してきた経過がある。このため一部には公営住宅と改良住宅を同一視し、特別施策の終了により同じ対応をすべきであるという論調もみられる。しかし、公営と改良は、根拠法、住宅としての性格・目的が異なる。住宅改良事業は地区全体の面的整備を図るもので、基本的に「まちづくり」の観点が強く求められており、その特性を活かした住宅政策があってしかるべきと考える。

(1) 成し遂げたことと副作用  (2) ハード・ソフト面の副作用

(3) 公共住宅施策の評価と展望

 多様な住宅供給等のハード面に限らない、地域福祉、「住み続けたいまち」の創造、自立に向けた仕組づくり等、総合的なまちづくりへと施策のウイングを広げる必要がある。

 

2 「住み続けられる魅力あるまち」とは

(1) 実態調査が語りかけるもの

 改良住宅割合が80.5%と大部分を占め公営比率も上昇。1世帯当たりの面積は全市平均71.6uに対し、同和地区では43.3u。注視すべきは、定住志向が78.6%あること。

(2) まちづくりの目標像−「住み続けられる魅力あるまち」の実現

(3) 「住み続けられる魅力あるまち」に向けて(5つの視点)

 ア 魅力ある団地環境形成

 イ 多様な住宅供給促進策

 ウ 高齢者対策等の住宅福祉施策の推進

 エ 公共施設等の活用による地域拠点への誘導

 オ 周辺地域との交流と共生

 

3 住民による自主的なまちの運営

(1) まちづくりの主体と活動支援

(2) パートナーシップによるまちづくりの台頭

   …千本、錦林、田中、東三条、崇仁の取組例

(3) まちづくり活動におけるNPOの役割

   …東三条、改進、崇仁の取組例

(4) コミュニティミックスとソーシャルミックスへの展開

 

4 新たな住宅施策の展開

(1) 改良住宅の譲渡、戸建て分譲

(2) 型別供給とメニュー選択方式

 住民ニーズに対応した建替と新築。ワークショップ等での対話システムの展開。

(3) コーポラティブ方式による定期借地権付き分譲更新住宅

 国からの事業承認を受けており、楽只地区で地元組織「じうん」の協力を得て進行中。

(4) 都市再生モデル調査

 「NPO崇仁まちづくりの会」が国の都市再生モデル調査に採択。住宅・医療福祉・商業・教育関連・環境施設整備の5スターによる都市再生プロジェクトプランの提案へ。

(5) 「住まいづくり」から都市再生へ

 

報告B部落の人口流出から見えてきたもの−改進地区の変遷から考える−/柳生雅巳

<改進地区の歴史>

 改進地区は竹田の子守唄で知られているところで、その位置は、東は24号線、西は高瀬川、北は近鉄、南は七瀬川という立地にある。1600年の関ヶ原の戦いの後、徳川家康が伏見城再興のおり、丹波橋通にあった被差別集団を現在地に移したといわれている。当時は野田村といったが、本来、竹田村に属し管轄も京都町奉行所となるものが伏見奉行所の管轄に置かれた。これは明らかに人為的に移されてつくられた部落である。明治末頃に人口が増加し、深草地区に拡大していく。

 立地条件は極めて悪く、高瀬川と七瀬川の合流地点にあり、他地域の田を守るためそこの土手を高くし、増水すれば地区内に水が流入するという遊水地であった。1972年の全面的改修の終了までは、絶えず水がつくという厳しい状況にあった。

1 まちづくり前の実態

(1) 「1950年(昭和25年)から1951年 京都市同和地区実態調査」から見られる実態

 リアルに示しており、それは貧困が非常に劣悪な住環境を生み、かつ教育の保障がされていない、そのことが部落差別を助長しているといえる。

(2) 住み替え対策としての住環境改善

 1951年オールロマンス事件。翌年、不良住宅地区改良法を用い錦林で着手。当初の状況は、住み替えだけで「まちづくり」の視点はない。

 

2 まちづくりのはじまり

(1) 不良住宅地区改良法1927年(昭和2年)から住宅地区改良法1960年(昭和35年)へ

 1962年改進地区で初の地区指定。

(2) 同和対策事業特別措置法成立(1969年)〜

 1969年同盟改進支部結成。まず住宅保障、次に就労保障の要求で闘う。1975年「改進地区同和対策施設整備計画案」策定。しかし、不良住宅の解消は、高層の改進7棟・加賀屋敷2棟の完成のときである。

(3) 1980年代から人口流出の増加

 市の現業労働者が約50%と安定就労層が増加する。80年代のバブル期になり部落の安定就労層の流出が増加。本来、改良住宅は住み替え住宅だが、結果的には通過住宅となった。これは当初からの改良事業手法を見直し切れなかったことによる。

 

3 改進地区の現状

(1) どのような町に変化したか

 今後のまちづくりの大きな課題…51年から見て人口は1/3になり、残っている高齢者や低収入者の問題、地域の相互扶助・共同体意識の希薄化の問題。

(2) これから予測できること

 まちづくりの原点に帰ること。社会意識としての部落差別は厳しく、差別事象が平然と行われる社会風潮のなかで、無原則に一般入居をすればどのような人が集まるのか。

(3) まちづくりで何を目指し達成できたのか

 住宅、就労、教育の要求をし、70・80年代にかけ成果を上げてきた。今、まちづくりの取組で、住むものが部落問題と対峙しうるのかという問題がある。お金ができた人が出るという循環的な役割を果たしている部落をどうするかが一番大きな課題ではないか。

(4) 新たなまちづくりへの展望

 地域のなかで力を結集し、問題に向き合い、つくり上げていくことが大切。また、 文化資本なくして外へ出た人の問題等。

 原点に立ち返り、今ある矛盾を解決することを担えるまちづくりを基本に、部落というまちが今まで受けてきた差別を根底に据え、そこから部落問題を解決していけるまちにしていくという基本的なスタンスが大切。

 

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