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第43回人権交流京都市研究集会

  分科会

人権尊重を目指す教育創造

 

                   2号館2201教室   

         司会      弓削 雅哉(京都市中学校教育研究会人権教育部会)

 

実 践 報 告

 

吉岡 淳史(京都市中学校教育研究会人権教育部会)

 

横下 鉄也(京都市小学校同和教育研究会)

 

                         

 

パネルディスカッション

 

       コーディネーター  伊藤 悦子 (京都教育大学教育学科教授)

 

       パネラー          菱田 直義  (部落解放同盟京都市協議会)

 

                         横下 鉄也 (京都市小学校同和教育研究会)

 

                        吉岡 淳史 (京都市中学校教育研究会人権教育部会)

 

 

 

        分科会責任者   杉田 明生(京都市小学校同和教育研究会)

 

        分科会庶務       加藤 正人(京都市中学校教育研究会人権教育部会)

 

1.実践報告@ 吉岡淳史(中人研)

中学校からは,「同和教育の理念の普遍化と協同的な学びの確立による学力保障」と題して,春日丘中学校の取組が発表された。春日丘中学校は,校区にいわゆる農村型部落を含み,これまでから同和教育を柱とした教育が行われてきた。近年,その理念を再び振り返ることにより,「学びの共同体」の考えをもとに協同的な学びの確立を目指した。それは,同和教育や人権教育を軸としながらも,道徳教育や総合育成支援教育の視点も加え,授業という場面で,「一人一人を大切にする教育」を行うというものである。

具体的には「聞く,聴く,訊く」などの「学びの作法」について教職員が徹底的に研修し,4人グループの学習活動の中で,学習効果を高め,生徒の絆を深めていく。こうして,「たくましい学び手」を育んだ結果,生徒達の表情もいきいきとし,学習面や生活面でも成果が現れ始めている。このような学習活動を通して,同和教育の理念を普遍化し,様々な人権問題に立ち向かう力を育む実践が熱く語られた。

[質問など]

・個々の学習を保障する取組(ノート指導など)はどうなっているのか。

 →この活動では,板書を写すことよりも,考えあうことに重点を置いている。ただし,キーワードを提示するなどの工夫はしている。

・人権学習の場面でこのような活動を取り入れれば,成果が見られるのではないか。

 →人権学習には「ダメなものはダメ」と押さえる必要があるという側面もある。その場面では,教師が熱く語ることも大切だと思う。

 

2.実践報告A 横下鉄也(小同研)

小学校からは,鷹峯小学校の「同和地区にルーツを持つ児童」を取り巻く現状と,「教員の同和問題認識を深めるための取組」について報告された。校区に都市型部落を含む鷹峯校区では地区外居住が進み,家庭の教育力も高まった中,児童の学力格差が目立たなくなったように見える。しかし,学齢が進むと学力格差が広がることや,児童の同和問題認識の低さなどが課題として残されている。

同和教育施策を知らない若年教員が増える中,こういった児童の背景に迫っていけるのか。どうすれば,保護者と理解し合い,同和問題について語れるのか。同和主任として悩みつつも自己の教育を振り返りながら,教員の意識改革に取り組んだところ,保護者との信頼関係を深めることができた。ある6年生担任が,他校との合同研修や同和問題の指導を通して変容した様子を紹介しながら,同和問題にしっかり向き合い,同和教育の理念を伝えていくことの大切さが訴えられた。

3.パネルディスカッション

  コーディネーター 伊藤悦子(京都教育大学)

  パネリスト    菱田直義(部落解放同盟京都市協議会)

           横下鉄也(小同研)

           吉岡淳史(中人研)

 討議@「同和地区児童生徒の理解をどうしているのか。背景を理解することの必要性が教職員の共通理解になっているのか。」

 

伊藤 同和行政が終わったあと,同和地区の実態把握が難しくなった。そのために,同和問題が見えにくくなっている。これは同和問題がなくなったように見られてしまう。しかし,宅建調査や人権意識調査では,差別意識が残っていることがわかる。また,ネットワークがなくなり,同和問題に対して個々に対応しなければならなくなったという課題もある。その反面,差別に立ち向かう力を持つ人も多く,同和教育の成果も見られ始めている。

横下 以前は,保小連絡会の中で把握できていた。今は,親戚関係や兄弟関係などからしか把握できない。流入はほとんどなく,流出は顕著である。

吉岡 やはり,把握は難しい。保護者と関係を作る中で,聞き出している。ただし,把握するだけでなく,保護者としっかりつながっていなければならない。

伊藤 大学では,学生が自分から言ってくれることで把握するしかない。

菱田 自分自身,地区外流出である。子どもが3人いるが,特に問題のある児童生徒とは思わない。子どもに部落のことを,きちんとは言えていない。しかし,実際に保護者が運動をしている自分の子どもを学校はどう関わろうとしているのか。

横下 特に家庭訪問の必要がない児童の場合でも保護者は何か思いを持っているはず。そこに,教師は寄り添うべきだと思う。

吉岡 菱田さんの思いは,こうやって実際に聞くと大切だと思う。例えば,生徒本人に今必要なケアがないとしても,保護者とは関わらなければならない。人権学習の場面でも,その生徒の背景や将来を見据えて取り組むことが大切だと思う。また,同和教育に関わりの深い先生は,背景を見抜く力を持っているように思える。

菱田 親の葛藤も伝えたい。自分の世代で終わらせたいなど複雑な思いがある。

横下 親たちの頃は,友達と支え合うネットワークがあった。しかし,自分の子どもにそういった友達関係があるのだろうか。そういった不安を聞いたことがある。教師としては,親の不安に寄り添っていきたい。

 

 討議A「現在の保護者や若者世代の部落問題認識はどのように行われているのか。」

 

吉岡 中学校では,様々な人権問題の一つとして同和問題を取り上げている。ただし,歴史的なことだけではなく,自分の中の差別性などに気づかせるような感性に訴える学習にしたい。基本的には,すべての場面で人権感覚を磨いていきたい。

伊藤 学習は社会科で行っているのか。担任が行っているのか。カリキュラムはどうなっているのか。

吉岡 保護者啓発も含め,来年度の内容を検討中であるが,基本的なカリキュラムはある。

横下 まち・人にこだわり「友達大好き鷹峯最高」をキーワードに人権教育を行っている。

伊藤 崇仁小学校で聞いた話であるが,「あそこが部落」と「ここが部落」では児童のとらえ方がちがう。その地域が最高といえる教育が大切。さらに,仲間作りが大切。

吉岡 学びの共同体の取組で,仲間作りの空気ができる。連帯共生が生まれ,広い意味での学力も育つ。さらに,地域を誇りに思う気持ちが必要だと感じた。これは,春日丘中学校が抱える課題であり,とても必要なことだと思う。

菱田 久世でも地区外流出が目立つが,地域の祭りには割と戻ってきてくれる。しかし,まだ連帯という所までいかない。

伊藤 部落だからこそ,地域コミュニティが希薄化しているのではないか。そこには,部落出身であることを隠さなければいけない社会背景などが原因ではないか。そこで,学校ができることはないか。

横下 鷹峯では「親の会」が発足し,顔の見える関係作りが行われている。「声を聞かせて100プロジェクト」といった関係作りの場も進めていきたいと考えている。

菱田 旧学習センターを利用して,同じように悩んでいる親の集まりを開きたいと思っている。孤立化して困難な状況にある家庭もあるのではないか。親にできることも考えていきたい。また,同和施策の経験の有無によってセンスに差があるのは,行政でも同じように感じる。

吉岡 以前は,学習センターを通したつながりがあったが,それがなくなった今後,親のつながりは更に希薄化する。学校が,何か仕掛けて行く必要があると思う。

横下 いろいろな親がつながれる,幅広いネットワークが必要だと思う。そこで,理解し合える関係が作られればいいなと思う。

フロアより

・私も同和地区出身で支部での活動をしている。吉岡さんからの「教育公務員は徹底的に学力保障をする。」という言葉に共感した。また,横下さんからの「学校がネットワークの中心になっていく」という言葉を心強く感じた。「部落にルーツがある」ということについて,子どもに伝えるのは必要なときでよいと思うが,そのときに受け皿があることが大切だと思う。小栗栖小では,様々な立場が寄り合って「問題行動は起こさないが何か気になる生徒」について焦点を当てたケース会議をして,背景に迫って行くようにしている。…菱田(小栗栖小)

・子どもの立場から,出身のことを伝えられるのは,急がなくても,いつでもいいと思う。私自身,部落出身であることを受け入れられたのは最近である。ただ,今は受け入れられないかもしれないが,親が勇気を持って伝え,正しいことを伝えていくことが大切だと思う。…菱田(葛野小)

・地区出身の把握については,春日丘中学校と同じ状況。ただし,小中の連携の中で,個々の児童生徒について十分な情報交換ができている。人権を大切にしている学校と感じてもらえることが大切である。…池田(春日野小)

 

伊藤 最後に,生徒理解・学力保障・ネットワーク作りを今後も進めていくことを確認して,この会を終えたい。

 

 

 

  

  

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