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第38回部落解放研究京都市集会

  3A分科会

同和地区の子どもたちの学力保障・進路保障

 

                      みやこめっせ特別展示場   

司会:仲村 良昭(部落解放同盟 京都市 協議会)

記録:鳥屋原 学( 京都市 小学校同和教育研究会)

佐藤  剛( 京都市 小学校同和教育研究会)

  

■講演

「部落の子どもたちに確かな未来を!!」

北川 昭典(部落解放同盟京都府連合会, 八幡市 議会議員)

 

■パネルディスカッション

  パネリスト:     佐藤 和子( 京都市 立崇仁第一保育所所長)

             玉中 和子( 京都市 小学校同和教育研究会)

             矢野 昭人( 京都市 中学校同和教育研究会)

  コーディネーター:  仲村 良昭(部落解放同盟 京都市 協議会)

 

【講演】

 「部落の子どもたちに確かな未来を!!」

北川 昭典(部落解放同盟京都府連合会, 八幡市 議会議員)

 昔から教育の保障が部落解放の第一歩であると言われています。現状は2002年度の「同対法」失効を節目に,解放奨学金・京都府の補習学級・子ども会育成事業が廃止,学校週5日制スタート,相対評価から絶対評価への変換などが部落の子の学力に影響を与えています。

 高校進学・大学進学の状況は,京都府全体ではほぼ95%前後を10年間推移していますが,地域では,全体より低いです。特に,2000年から年々下がってきて,2004年から盛り返している状態です。特に京都府南部には,京都府の同和地域の子どもの半分くらいがいますが,高校進学も府の平均にも及ばず,ずっと低い状態が続いています。

 次は,地域別・府立高校からの大学進学の状況です。全体では,10年前は44%で現在は57.5%と高くなっています。地域全体では,2002年から低くなったが今は50%の子が大学に進学している状態です。北部は,就職先がなく進学が多かったです。中部は,2003年に非常に低い数字になりましたが,教育行政が子どもたちに真摯に向き合うことで大学進学率があがりました。南部は,地域全体と同じ率で上がり,今年は地域全体より高くなっています。高校の先生の努力が率を上げています。

 次は,子どもたちの学力状況についてです。2002年より,成績評価が相対評価から絶対評価に変わりました。国語・数学・英語の3教科の評価についてです。相対評価は,5段階の率を決めて評価するもので,「5」は10%「4」は20%「3」は40%「2」は20%「1」は10%で評価します。絶対評価は,率を決めず,生徒の達成度(到達度)に応じて評価をします。「5」が40%になったり,「1」が0%になったりすることも可能です。文部科学省は,基礎基本をしっかり身につけさせるとし,「3」を基準としています。小学校の学力状況ですが,4年生の国語の学力診断テストで,特に南部が低く,地域の平均も京都府全体の平均の7点くらい低いです。4年生の算数では,中部が京都府の平均を上回っていますが,南部,北部は平均よりも低く,地域全体の平均は京都府の平均よりも低くなっています。6年生の国語では,南部が低く,地域の平均は,京都府の平均の8点ほど低くなっています。6年生の算数では,南部が京都府の平均より10点ほど低く,南部に多くの課題があります。中学3年生の国語では,2005年度の評価で,全体では「4」「5」の評価が相対評価より多く,「1」「2」の評価が相対評価より少なくなっていて,絶対評価の特色がよく出ています。南部の評価は,「1」「2」の評価が多くなっています。中部では,「1」「2」の率が非常に高くなっていて低学力が見られます。北部も「1」「2」の率が高く,不登校の子は「1」をつけざるを得ない状態があり,課題があります。中学3年生の数学ですが,南部では高いのと低いのが二極化していまして,「5」は高い率ですが,「1」「2」の率も非常に高くなっています。中部も,「1」「2」の率が高く,低学力の状態です。北部は,「1」「2」を合わせると40%あります。非常に低学力の状態が,顕著に表れています。中学3年生の英語ですが,南部は「5」は全体より高くなっていますが,「1」「2」も高く低学力の状態で,二極化しています。中部は「1」「2」が高く,北部は「1」の率が高くなっています。北部は不登校の子が「1」しかつけられず課題となっています。

 次は,家庭学習が定着しているかどうかですが,全体では3分の2が家庭学習が定着しています。小学校の間は定着していますが,中学生になったら毎日やっている子が周辺地域も極端に少なくなっています。家庭学習で定着している人がどんな内容の学習を行っているかですが,学習塾に通っている,家庭教師についている,学習教材を使っている,この3つで比較しました。周辺地域では,4年生くらいから学習塾に通っている率が増えてきまして,中学一年生では71%が学習塾に通っています。地域では,学習が定着している人で,中学でも半数くらいしか学習塾に通っていない状態です。定着していない子は,ほぼ同じ率です。地域では,中一から家庭学習が定着していない率が高くなっています。地域の定着していない子の3割くらいの子しか,学習塾や家庭教師等の手だてがうたれていません。周辺地域の場合は,学習が定着していない子でも,学習塾等に通っている状態です。

 次は,子どもの進路希望ですが,高校まで進学して欲しいと希望する保護者は,周辺地域より地域の方が多く,大学まで進学して欲しいと希望する保護者は,地域より周辺地域の方が多い状態です。女の子では,大学まで進学して欲しいと希望する周辺地域の保護者は大変多いのですが,地域の保護者は高校まででいいと,高校まで進学して欲しいと希望する保護者が多くなっています。次に高校生をもつ保護者の進路希望ですが,男の子では,周辺地域の大学まで進学して欲しいの77.7%に対して,地域では32.8%と大きな開きがあります。女の子では,高校を卒業したら働いて欲しいは,同じくらいの率ですが,大学に進学させたいが余裕がないの率が,地域では大変高くなっています。これは,奨学金がなくなった関係も大きく影響していると思われます。大学まで進学して欲しいは,地域では2割弱となっています。ところが周辺地域では,41.8%が大学に進学して欲しいと希望しています。地域と周辺地域では,まだまだ大きなずれがあります。

 最後に不登校児童生徒の状況についてです。2001年では,小学校で京都府全体の不登校の率の3倍が同和地域の率になっています。その後小学校では年々減少しています。中学校では,昨年より減少しているものの,一進一退を繰り返しています。京都府全体と比べて,小学校では2倍,中学校では約2.4倍となっています。不登校の期間は長期化してきています。フリースクールや各地の取組が,根本的な解決になっているか要注意です。

 多くの教育課題は,就学前の段階から始まっています。小学校の一年生から不登校児童がいます。それから,5年前に同和加配がなくなって家庭支援加配・児童支援加配に変わりましたが,今までと活動に変化はないのか,同和加配ではないから,同和地区の子どもだけの面倒をみていればいいのではないということになっていないか,人員削減等を大きな理由にしていないか点検が必要です。地域との関わりでは,保育所・学校・地域(関係機関含む)・家庭の連携が形骸化してきている分,課題が放置されているのではないでしょうか。連携がおざなりにされているのではないでしょうか。地域では、基本的生活習慣,生活リズム,家庭学習の定着(自学自習の力)をつけていくことが大切です。法律があるときは,補習学級ということで学校の先生が補習学級に来させてくださいとかいうことを言っていましたが,今はそういうことはなくなりました。学校から,宿題は毎日出すからそれだけはやらしてなどと,連絡ノートや家庭訪問で言ってくれることがなくなりました。学力状況は決してよくありません。絶対評価に変わっても,部落に大きな変化はありません。未だに低学力の克服を訴えなければならない厳しい実態です。学校に対しては,最低「1」をつけない学力充実の取組を求めていかなければなりません。相対評価は10%の子が「1」がつくということで,仕方がないということがありましたけれど,「1」がついたら絶対に高校に行けないという大変な状態です。「法」がなくなって5年経ちますが,様々な角度から施策や実態を検証する時期にきていると思います。

 

【発題】

  京都市 崇仁第一保育所所長 佐藤 和子

 保育所では,日々の保育で子ども一人一人を大切にして,豊かな人間性を育み,将来社会の中で自立していく力をつけていく,乳幼一貫した保育をしている。崇仁では,学力保障を目的として,保育所・小学校・中学校の教育連絡会を月一回実施している。会議の中で,子どもの姿,取組の情報を交換することで,子どもたちが入学したとき全体的に落ち着いている。読み聞かせの時間で,聞く力がついてきたり,図書の利用が多くなったりしていると聞いている。しかし,まだ生活習慣,人とコミュニケーションをとる力,言語力,学習週間の力の弱さが課題。保育所で育てていかなければいけない力は,「子どもたちの自立」。自立して活動できる保育の実践としては,見通しを持って活動できるようにする,保育環境の充実,交流保育である。保護者への取組としては,参観だけでなく参加型にしている。保育に参加してもらうことで,子どもの姿,関わり方,子どもと遊ぶ楽しさを体験してもらい,家庭の子育てにつなげていってもらっている。子育ては母親任せになっているために母親が孤立してしまうので,保護者同士のつながりを大切にして,輪を広げ,保育に参加してもらっている。安心できる親子関係にするために,楽しんで子育てができるように応援していきたい。そのためには,将来どんな子どもになって欲しいか,目的をもった子育てができるように,具体的に思いを聞き,働きかけていくことが保育所の役目である。

 

  京都市 立西院小学校 玉中 和子

 西院小学校,西院中学校は一小一中の学校である。ほとんどの子どもが9年間同じ集団で過ごすこととなる。そこで小中連携をしっかりと行っている。具体的には,人的交流を約4年前から行っている。アンケートによると,小中の移行がスムーズになった,安心感がある,中学校が近い存在となったという結果が出てきた。また,今まで中学校は小学校の1・2年担任にとっては遠い存在であった。しかし,中学校の先生が来てくださることによって,進路の話が分かったり,小学一年生でつけている力が中学校でどんな力になるかということがわかったりするなど,教師の意識改革となった。先を見通した取組として,大きな成果が見られた。

 課題としては,今まで同じ集団で育ってきた子にとっては,高校に行ったとき,はじめて社会に出ることになる。困難に出会ったときに,自力で解決する力が弱く挫折してしまうことがある。特に課題を背負わされている子は,すぐあきらめてしまうことが多い。そのうらには,基礎基本を支える力である自己肯定感や達成感,ねばり強さが弱く,そういった力をしっかりとつけていかなければならない。そのためには,家庭と手を携えて,保護者と共に考えていかなければならない。

京都市立弥栄中学校 矢野 昭人

 保育所も小学校も中学校も同じような課題があると思う。本校の考え方として,残った課題は,低学力と基本的生活習慣ができていないことである。生徒数は少ないが,生活環境の困難な子の率は高い。

 学力向上というと,どうしても国語・算数・数学の力を数字で見てしまう傾向がある。しかし今日は,授業改善よりも意識の問題の話をしたい。保護者として,この子をどうしていきたいのか,どういう意識をしているのか,地域の方は子どもをどうしていきたいのか,これを考えていくことが大切である。教師は,同対法が出る前から様々な取組をしてきたにもかかわらず,課題は以前と同じ低学力と基本的生活習慣ができていないことである。そこで,教師の意識を変えて,どうあるべきか,どうしていくべきかを考えていかなければならない。

 中学校3年間でどうこうしようと思っても不可能である。やはり小中一貫,連携は強化していかなければならない。その前の保育所も大切である。弥栄中学校でも一貫教育は行っている。教科や人的交流も取り組んでいる。今後は,保育所からの意識付け,高校との連携,大学との連携も考えていかなければならない。10年後同じ課題が残らないためにも,保育所,小学校,中学校が同じ方向を向いて取り組んでいかなければならない。

 

【パネルディスカッション】

司会 中村:北川先生のお話,また先程3人の先生方のお話を聞いて,保育所に行っているときは,保育所との距離は近かったと思います。小学校に入ると,月1回程度しか学校に足を運ばないようになりました。学校での状況は伝わってきませんし,子どもから聞くことしかないです。学校との先生との距離が,日を追う毎,年を追う毎に広がっているように思います。

 

玉中:1年生から6年生までの各クラスに入っていって,担任の先生方と一緒に考えていく仕事をしているんですが,小学校6年間で子どもたちはずいぶん成長します。1年生は,色々なところから入学してきます。1年生の先生はものすごく手厚く,一対一の関係から子ども達を育てていきます。保護者との距離も1年と6年で考えれば,1年生の方が距離は近いような気がします。ただし,家庭と連携を取り合うことは絶対怠ってはならないことですから,家庭訪問や家庭との連絡は密にしていかなければならないです。でもその反面,距離をだんだんおいていき「手は離すけれども,目は離さないで下さいね。」とお願いしています。1年生は担任の先生だけしか見えませんが,徐々に学校にはたくさんの教職員がいることに気づき,周りに友だちがいて人間関係を築いていきます。その中で社会性が育っていきます。そのことを保護者にもきちんと伝え,保護者と一緒にできればいいと考えています。

 

佐藤:初めて赤ちゃんとしてこの世に生まれて,そして初めて親の元を離れ,保育所生活という一つの社会に飛び出してきます。その中で保護者の方は不安だと思います。今まで自分の手元で一日中子育てをしていたのが,手元を離れ保育士という他人に預けるわけです。その中で子どもを中心にして,今日の出来事など色々なことを話し合うことによって信頼関係を築き,その中ではじめて「安心して子育てがしてもらえる。安心して保育所に預けられる。」ということをベースにしながらお子さんを大切に育てて行かなければならないということを,日々の送迎の時や家庭訪問,個人面談の時にはじっくり向かい合いながら,保護者の方と共に話をしています。子どもたちは,小さくても自分というものをしっかり持っています。その中で,まだ話さなくても泣いて訴える,「何かをして欲しい。こっちを向いて欲しい。」色々なことを要求してきます。その時,保護者は子どもから目を離さないで,子どもが泣いているときには,耳を傾けて欲しい。そして言葉を添えて,安心して生活できる場を造ってあげることが一番大事かなと,いうような話をさせてもらっています。

矢野:中学校ですが,月1回ぐらいは保護者に来校してもらう取組はしています。参観日,体育祭・文化祭など,どの学校でも月に1回は行っています。しかし,月1回の機会を設定しているにも関わらず,だんだん学校へ行く回数が減ってきたりするのは,なぜだろうと考えていました。例えば,初めて子どもができると,自分がどのように子育てしていいのか,どのように考えていけばいいのかわからない。その不安解消のために,近所の方からお話を聞いたり,仲間同士で相談したりすることがよくあります。が,一番大きいのが学校で,その最初が保育所ですよね。保育所の先生と話しながら自分の子育てを見つめていく,これは大きいことです。と考えたら,保育所の先生とのコミュニケーションがあって当然です。ところが,だんだん慣れてくると親が離れていきます。慣れてきて不安材料が減ってくると,段取りが良くなる,うまくできるようになると,だんだん学校から離れていくということがあるのではないでしょうか。意識をもっておられる保護者は参観日などでも毎回来てもらえます。ところが,そうでない保護者の方というのは,ほとんど来て頂けません。参加される保護者は毎回同じです。「この方に来て欲しいな。こんなお話をしたい。」という保護者は参加されない傾向がある。また,「中学校になると「学校に来るな。」と子どもが言うので,行けないんです。」という保護者もいますが親の言い訳ではないでしょうか。子どもの成長段階の中で親から離れていくことは無くてはならないものと思います。そして,それによって保護者と学校との距離が離れていくことも考えられます。しかし裏返して考えると,私たち学校が,「魅力ある取組・参観にしているか。面白い参観にしているか。」という反省にもつながっていくと思います。もしだんだん離れたとしても,保護者の方が「参観したいな。見てみたいな。」と思われる授業や参観ができれば,もっと参観していただけるかもしれません。学校ももっと反省しなければならないと思います。学校を魅力あるものにしなあかん,不安とかそんなものを超えた魅力ある授業展開・参観にすれば,慣れとかを超えて学校に来ていただけるようになると思います。

 

玉中:来て欲しい家庭に事前に家庭訪問をします。そして保護者に,「このような内容で保護者会をしますので是非来て下さい。」とお願いします。しかし,もし来られないとまた家庭訪問をして,「保護者会でこのようなことを話しましたよ。」と熱く担任は語りますが,「ほんまに,それでいいのかな。」と最近思います。つまり,保護者の方は参観しなくても担任から話が聞ける。学校へ行かなくても話が聞けます。魅力ある参観,参加したくなるような懇談を企画することは必要だとは思いますし,今までのやり方では,なかなか保護者の方々に足を向けてもらえないかなと考えています。

 

中村:家庭の教育力を上げるために,特に小・中学校ではどのような実践をされているのでしょうか。家庭学習・宿題などを定着させるための具体的な実践があれば紹介してください。

 

玉中:家庭学習とは何かを考えることが大切だと思います。西院小では子どもが自分で自学自習できる家庭学習をメインに置いています。一方でスキル的な学習も大切で,かけ算や九九,漢字の読み書きができることは大前提として必要なことですが,自分できちんと計画を立てて学習することができるよう指導しています。また,学習机があるのに別のところで勉強したり,その横でテレビがついていたりというような状況で学習が進んでいる。これらのことも実際に家庭に足を運ぶ中で,「そうではなくて」と話もしています。

矢野:家庭学習ができれば学力は向上できると思いますが,それができないところにしんどさがあります。だから,小中一貫と言う考えに結びつくと思います。やれる子,できる子をほっておくのではなく,より伸ばすこともしていかなければなりませんが,やれない子をどう公教育の中で見ていくのかが大事だと思います。家庭学習を出してもできない子,わからない子,確認テストをしても点数の採れない子たちにどういう手だてをしていくのかが大事です。中学校ではなかなか宿題が出せません。宿題=家庭学習ではありませんが,中学校から「このような学習をしなさいよ。」という学習の手引きを配布して,中学1年生に確認をした時期もあったのですが配っただけで終わってしまい,宿題が定着せずに困っていました。今も困っています。そんな中で,「白川小学校では宿題を出してきっちりやり切らせている。やっていない子は,放課後担任が残して一緒について最後までやらせる。」と聞きました。ところが,中学校に入って数ヶ月もしないうちにその習慣を忘れていくのは,長期休業中にまとめて出すことはあるが毎日出していないことが理由だと考えました。そこで本校で今見直しをしています。家庭学習をきちんと定着させようと,学校から宿題を出して家庭学習の一つとしてきちんとやらせるということを,取り組もうとしています。小学校のノウハウをいろいろお借りして,小中9年間で自学自習のできる子の育成を目標に取組みをしていきたいと考えています。小中一貫教育がどこに焦点をあてているかというと,本当にしんどい家庭の子,学習面や生活面でしんどい子をどうしていくのかということを考えたとき,3年間では難しいので9年間でしっかり見ていくべきだという結論に達しています。

 

中村:保育所の方で何か就学前の取組,地域との連携,小学校との連携等があればお話し頂けませんか。

 

佐藤:子ども達の課題に,基本的な生活習慣が身についていないことがありますが,子ども自身が保育所の中で見通しを持って生活できているかということが大事だと思います。子ども達が自主的に活動できるように,一年間の取組カレンダーを用意し,時計を見てお片づけを毎日行っていくなかで,それが自然に身についていく。そして,自分ができるようになったら,友だちにも声かけができるようになる。そのような保育をしています。直接的な学力向上の取組について直接字を教えたり何かをしたりするのではなく,毎日の生活の中で自分が進んで何かに取り組む中で生活にはきちんと時間があることを分からせるようにしています。そういう力がとっても大切で,お母さん達にも子育てにきっちり見通しをもち,子どもも見通しをもって生活ができる子育てを保護者と一緒にできればと考えています。

 

中村:先生から「親としては,ここまではできます。学校はここまではします。これからはお願いします。」というのを言って頂くと親としては助かります。このことについて何かあればお願いします。

 

玉中:よくお父さんやお母さんがおっしゃいます。「自分たちが習った時代の小学校とちがうしな。学校に任せるわ。」と。でもちがってもいいと思います。一緒に考えてもらうことが大切だと思います。子ども達が机に向かって学習しているときにおうちの方が何をしているかを,一緒に考えていきたいなと考えています。生活や家事に追われて忙しいとは思いますが,横に寄り添ってもらって「今,どんな勉強を何しているの。」とか「そのやり方難しそうだけど,教えてくれる。」など一声かけるだけで,随分ちがうと思います。確かに高学年になると内容は難しくなります。教科書をパッと見ただけでは教えられない問題などもあります。だけどもそれを,少し子どもたちの目線に立って考えてもらうと,子ども達も一緒に考えられると思います。

 

矢野:本校では,家庭訪問や色々な保護者会の時に「人間,夢や希望や目標を持たなければ向かえない。」と話します。中学校というのは三年間で義務教育が終わるんです。そこから,働きに出る子も中にはいるんです。そう考えたときに,しっかりした夢や希望を持たせることが大事だと思います。そのためには,視野を広げることが必要だと考えています。部落の子に仕事の話をすると,特定の仕事しか出ないんです。今でも簡単に役所に入れると思っている子がいるんです。保護者の方に子どもに,「何々になって欲しい。」と色々な夢や希望を一緒に話ができる保護者になって欲しいと思います。自分のことに,自分の将来のことに親が関わってることが,子どもには中学生には大事だと思います。できない家庭には,教師の方から色々なアドバイスをしながら,子どもに働きかけをしてもらうことが必要と考えています。また,環境づくりが大切だと考えています。勉強していると思えば,「テレビの音を小さくする。テレビを消す。」といった気遣いも含めた学習環境づくりをしてもらえたらなあと思います。自分の子の将来に対する意識をもって,学費のことも頭に入れていて欲しいと思います。これらのことを保護者の方と一緒に考えていければと考えています。

 

中村:小中連携のお話ですが,そこに親が入り,親と学校との距離を縮めたり連携を深めたりすることが大切ですが,家庭や学校だけでは足らないところを,地域との連携で子ども達を素直に大きく育てると思います。その意味で,地域の目が大切だと思います。地域と家庭と学校の連携があって子ども達をまっすぐに育てると思います。そこで,地域連携の具体的な話があれば出して下さい。

 

玉中:西院で言いますと,地域運営委員会を立ち上げています。西院は同和地区が小さいですがそれを含めて,「地域で子どもを育てようではないか。」ということでたくさんの方に協力して頂いて進めています。地域の中に厳しいおっちゃんが必要だと思います。今は核家族化して,家庭家庭に任されています。ましてや,その家庭は若いお父さんお母さん世代だったりする。すると,隙間を縫って子ども達は間違ったことをしてしまったり,危ないことに巻き込まれたりしています。ですから,地域ぐるみで子ども達を見ていくことは大切だと思います。そんな形で進めています。

 

佐藤:保育所も小さな子ども達が安心してすめる地域ということで,育成会の役員の方を中心に色々な活動を行ってもらっています。一つが,地域で大きなお祭りがあります。5年前までは保育所単独のお祭りでした。それを今度は,地域の祭りに参加させてもらう。そこで小学校や中学校の保護者の方とつながりができる。そして,子ども達の姿が見えていく。それをまた,役員さん通じて保育所に持って帰り,他の保護者の方に広げていく。そして保護者の方も,また新たな目で地域の方とつながりをもつ,そんな取組を今行っています。そして,「子ども達をみんなで育てましょう。」ということで,地域も色々な活動をされています。

 

矢野:4校連絡会があります。各学校と館の関係者の会があります。また教育懇談会もあります。これは地域の方の学習の場で,運動団体の方以外に色々な地元の方が入ってこられます。そして講演会,これには保護者,地元のおじいちゃんおばあちゃん等も招いて行っています。昨年1月に人権劇を地元のコミュニティセンターでやらせてもらいました。地域の方,地元の保小中,コミセンから学セン,学童,子ども,卒業生が,啓発の場として一つの劇をしようということでやっています。地域の兄ちゃんや姉ちゃん,保護者と教育に携わっている僕らが一つになってつながれるそういう取組も行っています。また,町づくりも一つの協議会だけでなくみんな参加しようと言うことで,PTAも協力し地域のおっちゃんやおばちゃんも参加してもらい,そして生徒も参加するようなことも行っています。

 

中村:学習施設の関係,在り方について,個人的でも構いませんので出して下さい。

 

矢野:今,学習施設はなくなる方向で話が進んでいるようです。個人的に思いを言いますが,本当に必要でないならばなくなってもいいと思います。裏を返せば,必要ならばなくなったらあかんと思います。学習施設が本当に必要であるかどうかというのは,地域の実態(部落だけではない)・家庭・子どもの学力・その背景にあるもの全ての実態をしっかりつかんで,必要であるかどうかを考える必要があると思います。逆を言うたら,今まででしたら,同和地区を含む学校に全てではないですか学習センターが置かれました。地域のない学校でも必要ならあったらいいと思います。今まで,学習施設は何だったのだろうと言うと,部落差別をなくすために,部落の子に力をつけるために建てられた施設というのは正しかったと思います。では今はどうかというと,部落の子どもだけでなくあらゆる子どもが,社会に出て行くための生きる力を身につけるための一つが学習施設だと思っています。ですから,これが必要ないというのは,例えば,家庭でしっかり学習できるならば,自学自習がしっかりできる子どもであれば,あるいはそういう時期であれば必要ないと思います。ところが,自分の地域を見たときに本当にそういう時期なのか,と思います。被差別部落を含むからあるのではなくて,いろいろな環境の子がいる,非常にしんどい子がいるから作っていく,あるいは何ら手だてをする必要はあると思います。

 

中村:「最近の高校進学の状況に対して,資金的な現状についてどうなっているのか。」という質問があります。京都市内の全体の現状とか,わかる範囲のことを教えていただければと思います。   

 

矢野:本校では同和奨学金がなくなったということで,進路が変わっていっています。実質,本校はずっと高校進学しています。今年の3年生は部落の子が6人いますが,6人とも公立はまだ受検がありますが,私立の段階では今のところ合格しています。でも実際はお金がかかります。同和和奨学金なくなって,高校にいけない子が本校にはいます。学費が原因で中途退学している生徒がいます。「金がなくて払えんかったら,無理して学校行かんでもいいやんか。やめたるわ。」で,実際に本校では何人もやめています。と考えてみると,同和奨学金の意義はすごいものがあったと思います。お金を出すわけではありませんが,今後学校としても考えていかなければならないと思います。保育所との連携も含め,お金が必要だなということを保護者にしっかりわかってもらえたらという気がしています。現実を,今の生徒と保護者にしっかり伝えていかないとこの先厳しいと思いますし,それをしっかり伝えることが私たちのやるべきことだと思います。

 

中村:先生だけ,家庭だけ,地域だけ,個別では子どもは育たないので,一緒に手と手を取り合って,一緒の速度で一緒の歩幅で歩いていかなければ子どもは育たないのかなと実感しました。これで,パネルディスカッションを終わります。

 

責任者 梅井

 学校評価のガイドライン,いわゆる学校にランクをつけるということも出ております。そんな状況の中,同和校である学校はどうなっていくか,私たちは心配しています。また,学習施設は4月から外部講師を含めて現場の先生方を派遣しない方向で進んでいることは,皆さんもご存じのことと思います。そうした中で,教育委員会は学校現場で学力保障の改革案について模索をしている最中であると言っています。かつて学校現場が十分な学力保障ができないがために,我々の運動の成果として学習センターが各町内に建設されてきました。しかしながら,その学力保障は今になって「学校でやっていく」というような方向で進んでいくのは事実であります。社会的困難を抱えている子ども達がたくさんいると思います。そういった中で「部落の子だけしっかり勉強を見てやってくれ。」と言うつもりはありません。また,学習施設の問題に関しても,向こう十年,二十年のスパーンで続けてくれと言うつもりもありません。どういう展開になるかわかりませんが,私は,地域,現場そして委員会の中で議論なしに,この問題を進めてきたことが問題だと思います。最後になりますが,法律があろうがなかろうが,そして施策やその他の制度があろうがなかろうが,今までの同和教育に私たちが培ってきたものに対して自信を持っていただいて,地域やあるいは学校現場でそれぞれの果たす役割を明らかにしながら共に頑張っていくことを最後にお願いしまして,閉会の挨拶とさせていただきます。本日はありがとうございました。

  

  

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