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第38回部落解放研究京都市集会

  1分科会

部落の歴史と啓発活動

〜いろんな啓発活動の実践をとおして〜

                          京都会館第2ホール

日   時  2007217日(土)午後130分〜午後445

テ ー マ  「部落の歴史と啓発活動」

司会・進行  山田 康夫(部落解放同盟京都市協議会)

報 告 者  三上 真 (NPO人権ネットワーク・ウェーブ21

       北村 淳 (NPO人権ネットワーク・ウェーブ21

       山田 義春(部落解放同盟京都市協議会)

       古森 義和(京都市小学校同和教育研究会)

パネリスト  伊藤 悦子(京都教育大学教授) と上記報告者4

参加者数   約250

概  要

1分科会では,「部落の歴史と啓発活動〜いろんな啓発活動の実践をとおして〜」をテーマに,基調提案の内容に沿った形で進められた。まず,地区史とまちづくりを中心に,改進地区と錦林地区からの報告があった。その後,報告を受けてのパネルディスカッションでこれからの啓発のあり方について議論を行った。

○報告1  NPO人権ネットワーク・ウェーブ21の取組から

「改進のまちづくり今昔」(三上 真)                

・戦後の改進地区の移り変わりを中心に。               

・河川改修がなされていない頃には,高瀬川,七瀬川の合流地点での水害に悩まされる。明らかな堤防の高さの違いが残っていた。

・衛生上の問題,水道,台所,道路といった住環境の問題,また,住環境に起因する不就学の問題,就労状況などについて。

・同和施策から「NPO法人人権ネットワーク・ウェーブ21」の取組へ。

「改進地区の現在の様子と課題について」(北村 淳)

・急激な高齢化率の増加の課題。

・最低居住水準を満たしていない改良住宅。

・若年層の減少(経済的安定層が家を買って出ていく)。

・超高齢化と経済的不安定層のまち。まちづくりのあり方を考える。

  

○報告2  錦林地区の取組から

      「錦林地区の歴史」(山田義春)

      ・オールロマンス事件当時のまちの様子(住居など)。

      ・全国初の改良住宅(1953)にまちづくりの参考として大阪松原より見学者が訪れる。

      ・隣保館,学習センター,保健所分室,福祉センターなどの設立。

      ・鹿ヶ谷交番所村田巡査死亡事件…部落の若者が疑われる。(未解決のまま)

      ・錦林まちづくり推進研究会(地域づくり)20003月発足

       ※200511月K1棟完成

      ・人権ひろば 錦林のつどい(様々な構成団体,錦林をもっと知ってもらう)

      

「錦林識字学級の取組」(古森義和)

      ・取組の概要                               ※全体学習と個別学習を中心に週1回行っている。

      ・学級生の作文「わたしと識字」とひとり芝居(脚本井上新二先生)        ※作文の紹介,ひとり芝居ができたきっかけなどについて話す。

      ・ひとり芝居を各地 (特に,同和地区をふくまない多くの学校)で上演して                          ※啓発としての取組,劇の参観者の声の紹介

      ・差別することの反対は,尊敬すること。「知ること」の大切さ。

 

 

 

    パネルディスカッション「これからの啓発のあり方について」

  (司 会)報告を受けての感想

  (伊 藤)ウェーブ21の取組はよく知っている。同和問題の研究者であるが,現場の様子を見ないと,実感がわきにくい。錦林の歴史や差別の厳しさがよく分かった。特に,村田巡査事件は,狭山事件に近いものがある。また,識字活動の姿から私たちが学ぶものも多い。                           両方の報告とも建物の写真が多かった。その建物が建つに至った部落の人間の努力を忘れてはいけない。住民の努力の結果である。

  (北 村)自然な啓発,双方向の取組,固定観念の崩壊が大切である。

  (三 上)まちづくりは人づくり。若い世代と暮らしていける社会,まちづくりを進めなければならない。まず,正しく知ることが第一歩である。

  (山 田)高齢化についてはどの地区も抱える問題である。昔の改進地区の様子も知っている。まちづくりについても見習うところがある。人の写真もあったが使わなかった。

  (古 森)いろいろな地区の断片的にしか知らなかった生活や子育てについても訴えていく必要がある。まちづくりの様子をより多くの人に啓発することの大切さ,自分の子どもにどこまで同和問題が語れるのか。

  (司 会)今は,情報が氾濫し,ねつ造や垂れ流しなど一方通行となっている。他にも啓発を進めていく上での難しい所や課題などがあれば

  (北 村)スライドなどたくさんの資料を作っているが,発信していくことが大事。意義も伝えていかなければならない。生活感があるメッセージを送れるかどうかが課題。

  (山 田)例えば「錦林のつどい」に地域の方の参加が少ない。周辺と一緒に地域の方の参加も促したい。

  (古 森)ひとり芝居が訴えるものが大きい。啓発といえば,かつては,施策についての説明が多く,批判的な意見もあった。今は,授業参観を通して親子で話し合っている。しかし,人権での参観懇談となると,参加者が少ない。

  (司 会)1969年同和対策事業特別措置法が制定,事業展開され,啓発等を受けた人たちの子どもが現在の大学生である。大学生の同和問題の認識はどうか。

  (伊 藤)京都教育大学の学生は,まじめな学生が多い。学内に差別落書など皆無である。差別はおかしいと思っている学生が大半である。しかし,部落問題に対する緊迫感がなく,自分の問題として捉えていない。家庭内でも話題とならない。祖父母の差別意識について話題になるぐらいである。部落問題についていかに現実感を持たせるか,解決を目指す人とどれだけ出会わせるかが課題となる。改進のフィールドワークを講義の中に取り入れているが,外側だけを見るのではなく,そこに至るまでの歴史を学んだり,30年前の様子と比べたりしている。そして,地域で活動している人の声を聞く。出会うことによって,そこに生きている人の姿,部落問題のリアリティをつかむ。実態を学んだり,まちづくりを一緒にしたりしていかないと,自分なりの部落問題の関わりが見えてこない。

  (司 会)「地域の中は,改善され,どこに差別があるのか見えにくい。」とよく言われるが,部落問題のリアリティーをどのように発信していくか。現実感をどのようにもたせるか。

  (三 上)確かに啓発しているとよく聞く。どのようにしていくか難しい。今,  再認識した。

(山 田)周辺地域にどのように変わっていくか知ってもらう。若い世代につなぎたい。

  (古 森)結婚差別,就職差別のような事件性のある差別とは違い,識字は日常性の生活に関する差別である。文字を綴るというあたりまえのことがあたりまえではなかった。学ぶことの大切さ。

  (司 会)フロアの方で意見や感想があれば

  (フロア)私は,錦林識字学級に25年通っている。25年学ぶ中で変わってきた。町内の若い者はどんどん出て行く。私も孫が5人いるが,就職活動をしている。自分で切り拓いていかなければならない。識字学級で学ぶ中で,自分自身の韓国の人に対する差別意識がなくなった。

  (フロア)部落史の中で伝えていかなければならないことがある。企業では,不祥事が起こると,体質のせいにされる。市職員で不祥事が起こると,部落民が悪いことになる。市の職員の中に部落民が多い背景が語られない。かつて誰も現業職に就きたがらなかった。人がしたがらない仕事をしてきた歴史がある。かつて進学や就職に大きな壁があった。施策によって大きな成果があった。不祥事は正さなければならないが,雇用促進の背景に何があったか歴史を踏まえた上で伝えていくことが大事である。

  (フロア)私も学校に行けない一人だった。学校に行けず,仕事ばかりだった。読み書きをしたいと思い識字学級に通った。最初は,スコップより鉛筆が重たかった。1字書けるたびに,差別から自分を取り返したという思いになる。

  (司 会)基調提案の中に部落が背負わされた背景がある。冊子を読んで確認してほしい。

  (伊 藤)今の啓発の課題は,どこまで本音が語れるか。様々な情報を出したり,疑問を投げかけたりする場があればいいと思う。

  (北 村)私だからできること,私しかできないことをしていく。こどもたちが集まる場所,集まれる場所を拠点にして,伝えるべきことを伝える。

(三 上)正しく知るということが大切。人の生き様がどれぐらい伝えられるか。目に見えるところではなく,背景を伝えることが大切。

(山 田)あらゆる人権について語り合える交流の場の設定。若い世代へのつなぎ。錦林の集いにもっといろんな立場の人が参加してほしい。

(古 森)フロアから話しが出るのは,すばらしい。大勢の人前で自分のことを語ることが大きな啓発なっている。心と気持ち,感性で伝えていく。かつては同和問題がタブー視されることがあった。保護者啓発でも先生に言われるから,何も言わないでおこうという風潮があった。不祥事によって,一部の者がしたことが全部がそのように見られるのが問題である。

(司 会)今後の啓発のあり方について感じておられることをキーワードとして

(古 森)“生きる”と“命”。自分の生き方にほこりを持ち,大きな壁を乗り越えたことについて語り合うことができればよいと思う。部落差別によって生き方を変えられる人がいる。さらに,命まで奪われることもある。目の前にいる子ども達に考えてほしい。

(山 田)まちづくりの8つのキーワードを述べてきた。“K棟の開発”,“福祉”,“より幅の広い人の参加”,“若い世代の人材育成”などである。

(三 上)“正しく知る”,“壁を取り除く”,“次の行動へ移すための橋渡し”。京都市教育委員会の教育目標は,「一人ひとりを徹底的に大切にする。」である。あらゆる場で,それを実践していくことが大切である。

(北 村)“子どもが集まれる場”,“子どもが変わったことを発信できる場”が大切である。学習施設で働いているが,子どもと接するたくさんの機会がある。教育と生活の場となっている。

(伊 藤)“部落差別との出会いをよいものにしていく”,“事実や資料に基づいて科学的に語り合う”ことが大切。

(司 会)生の声が聞けてよかった。心で感じることができたのではないか。知ること,学ぶことが大切。送り手の一方通行だけでなく,受け手の思いも伝わることが大事。

  

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