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第43回人権交流京都市研究集会

第2分科会

 共生社会と人権

  「多文化共生のまちづくりをめざして」

 2号館2101教室

 

                     記録 北澤宏市朗

昨年年10月東九条に「多文化交流ネットワークサロン」が設立されて多文化共生施策も大きく前進し、「多文化共生のまちづくり」が地域住民とNPO等との協議によってすすめられつつある。本分科会ではこうした1年を振り返り、在日コリアン・ニューカマー・中国帰国者など多様なマィノリテイの視点から、いかなる「多文化共生のまちづくり」の創造的なコンセプトを発信することが出来るかの議論を深めた。第一部では5名の方から報告があり、続く第二部では司会者の金周萬氏(東九条CANフォーラム事務局長)も加わり分科会の参加者全員のディスカッションが行われた。

1、基調報告 朴実さん

京都・東九条CANフォーラム代表朴実氏から「東九条マダンと多文化共生のまちづくり」をテーマとした基調報告があった。東九条マダン20年間の成果として@地域住民主体の自主的運営による「多文化共生のまつり」への成長A幼児から高齢者(在日1世から5世)まで世代を繋ぐまつりへの発展B年々来場者が増え(昨年は5000人以上)地域に活性化をもたらしたC小中学校4校持ち回りで生きた多文化共生教育の場を作れた事を挙げられた。一方課題として@練習会場の確保、資料・資材の保管場所等の不足A民族文化保持活動としての楽器練習・料理・韓紙(ハンジ)・仮面(タル)・チョゴリ縫い教室等の常時活用面で弱さがある事を指摘された。

生活館(隣保)事業と住環境整備終了、人口の減少と少子高齢化、学校の統廃合という中で、今後の東九条のまちづくりに向け「崇仁・東九条エリアマネージメント」準備委員会が建ちあがる等新しい動きも出ている。また多文化共生ネットワークサロンで47日「東九条春まつり」が開催される等の活動が始まっているが、委託管理が1年契約で短い事、サロンが地域福祉課管轄で多文化共生の京都市の窓口=国際化推進室で縦割り行政の現実もある。また「多文化共生ネットワークサロン」活用を大きな課題としつつ、そこで包摂し切れない事業も有ると考える。故に「ネットワークサロン」の別館も一つの選択肢として「多文化共生推進センター」の設立を求めている。東九条を「多文化共生の息づくまち」にすべく、陶化・山王小学校等の跡地を地域住民もニューカマーも皆が共同で利用できる場を求めての今後の活動の支援を訴えるものであった。

2、報告 劉仙姫さん

京都大学の研究者劉仙姫さんより「多文化共生のまちづくりーニューカマーの視点からー」と題し、韓国と日本の違い等も含め報告された。現在韓国では国際結婚による外国人移住女性は12万人以上で、9組に1組は多文化家庭となっている。2020年には人口の5%が外国人、多文化家庭が全体の約20%に達すると見込まれ、多文化社会統合は時代的課題となっている。現在質の高い社会的統合を目指し@レベル別韓国語教室運営の拡大A技術教育支援と内・外国人との姉妹血縁B外国人住民を「社会に貢献する住民」として育成するグローバル社会C外国人住民に就職機会を与えて経済的自立力の向上を図るD市民参与型外国人住民支援事業の発掘拡大E官・民連携を通じて体系的な統合支援の推進等の施策に力点が置かれている。例として結婚移住者に対する放送通信教育事業、多文化家庭子女に対する教育協力事業、多文化家庭による社会奉仕団事業、移民女性の職業能力開発事業等が紹介された。

一方で日本におけるニューカマーの定着問題としてはご自分の子育て経験も含め、疎外される外国人を包摂する地域作り、日本人への多文化理解教育増進が必要であり、@自立のための就職能力の向上と就職権の保障強化A外国人の生活便宜システムの構築(住居、文化、言語、医療等)B子供の教育問題(言語と文化的環境側面からのメリットとデメリット)C多文化コミュニティ活性化―外国人間交流や日本人との交流のための多文化施設の必要性D地域における多文化政策のためのコントロール・タワーの設置の諸点を指摘された。

3、報告 南c賢さん

NPO法人京都コリアン生活センター「エルファ」事務局長の南c賢さんは「在日コリアン高齢者・中国帰国者高齢者の介護の現場」と題する報告を行った。エルファは1999年に居宅サービス事業所として京都市南区に設立後2001年にNPO法人認可を受け、在日コリアン高齢者のための介護事業を中心に障害者支援、子育て支援等の総合的な福祉活動をおこなっている。介護保険は国籍条項がなく日本に居住するすべての外国籍高齢者も日本人同様サービス利用者となったが、保険料は徴収される在日コリアン高齢者が介護サービスをスムーズに受けられないという状況が生まれた。この支援のためにエルファの実践が始まった。異文化を背景にもつ人々が日本に長く生活する中で、その人たちの抱える生活の問題も多様化、複雑化している。同時に教育・医療・福祉の現場は着実に多文化になっている。いま高齢者が増加しつつある中国帰国者の介護問題解決のための支援活動が帰国者の2〜3世を中心として始まりつつあり、エルファの経験で支援できると考えている。マイノリティーの「あるがまま」を求め、彼らが自分らしくいられる場所づくりに今後も取り組んでいきたいと締めくくられた。

4、報告 村木美都子さん

NPO法人東九条まちづくりサポートセンターまめもやし事務局長の村木美都子さんからは「東九条高齢者調査から見えたこと」が報告された。昨年3月と5月に、京都外国人高齢者・障害者生活支援ネットワーク調査チームの東九条高齢者実態調査が行われた。地域の民生委員や老人福祉委員の協力の下、在日コリアン含む高齢者宅を訪問して生活の様子や困っていること、現在の幸福感などを聞き取り方式で行った。今回の調査で見えてきた東九条の在日コリアン高齢者が抱えている課題は『孤独感』である。訪問介護・往診などの在宅サービスを受ければぎりぎりまで住み慣れた自宅で生活できるが、大きな心の問題を抱えている人が多いことに気づかされた。家族・近隣・友人などとの関係が断絶し、高齢化と共に体が不自由になって孤独や不安を抱く人が多い。子供等と別居し家族には頼れない状況にある方や、様々な思いを誰かに聞いてもらえず日々を過ごしおられ方も多い。特に在日コリアン1世は、戦前・戦中・戦後の苦難の日々を過ごして今なお満たされない思いを持ち続けている人が見受けられた。 

モアの活動の一つとして傾聴活動が行われてきたが、その経験を活かし調査でみえてきたこれらの課題に応えていかなければならない。調査後訪問・傾聴活動は強めているがまだ十分ではなく、今後さらに外国人福祉委員の活動の充実化が必要だと考えている。東九条内外の団体の連携、在日コリアン高齢者の抱えている課題に応えていくための人材育成や地域の社会資源のネットワーク化が求められると報告を締めくくられた。

5、報告 小澤亘さん

立命館大學教授小澤亘さんは「多言語DAISYテキストによる学習支援ネットワーク構想を」を報告された。DAISY研究会はデジタルテキスト作成ツール「多言語DAISYテキスト」での新たな外国人児童教育支援ネットワークを提案し、日本に在住する外国人の日本語・母国語学習に応用していくことを目指している。多様な文化的背景を持ったニューカマー外国人の子供たちは「日本語の習得」という大きな困難に直面して苦しんでいる。「日本語初期教室」「学習支援ボランティア」「学校通訳者の派遣」などの努力があるが多様なニーズに応えられていない。他方公立学校に通う在日コリアンの子供たちに「民族学級」などの政策が取られているが十分ではない。民族的文化資本である自民族の言語を取り戻す言語の教育は、多文化共生社会を築く基礎であるはず。学校内での「学習言語」の習得は日常の生活言語の習得と異なり、難しい抽象的な言葉や複雑な表現法の習得が必須。学習言語をしっかりと身につけていくため、基礎となる母国語とともに外国語を同時に学んでいくことが効果的である。この問題を乗り越える切り札として、DAISY多言語教科書が提案されている。20091月の立ち上げ後、同年12月アジアブラジル学園と協力し多言語DAISY絵本「大きな夢」を作成。2009年度に湖南市のアジアブラジル学園のポルトガル語と日本語併記し子どもたち自身の声を録音した手作りDAISY絵本を作成。2010年度は湖南市石部南小学校、京都市御室小学校との連携や湖南市教育委員会と連携した日本語初期指導教室「さくら教室」での日本語学習に取り組んだ。多言語による外国人支援活動は要求される専門性の高さからボランティア人材が限られ、「支援がなかなか届かない子どもがいる」という悩みに直面しているが、突破するアィディアとしてDAISYテキストを使用した学習支援ネットワークを提案する。こうした補助ツールによって支援組織側が支援の中身を見直し一層充実・高度化していく余裕も生まれ、要求される専門性ゆえに関わってこられなかった大学生や留学生たちが支援の輪に入ることができる。また蓄積された多言語DAISYテキストは、グローバル化社会に直面する日本の文化遺産ともなり社会の文化的豊かさを生み出す。これはニューカマー外国人の支援ネットワークだけではなく、在日コリアン児童の民族の言葉を取り戻す活動にとってもきわめて有益といえ、こうしたネットワークが機能するためにはそれを支えるセンター機能が不可欠。多文化交流ネットワークサロンがそうしたセンター機能を発揮した事業展開が出来るか否かも含め検討し、京都・東九条の地から世界に向けて多文化共生社会の力強いメッセージを発信していって欲しい、と結ばれた。 

6、報告 菅沼信さん

「多文化が息づくまちを目指す京都市国際化推進プランの現状―観光と多文化行政―」と題する報告は京都市国際化推進室交流推進担当課長の菅沼信さんからレジュメに沿って行われた。 

「京都市国際化推進プラン」策定の柱はコミュニケーション支援、生活支援、多文化共生の地域づくりの3点だった。「京都市多文化施策懇話会」では国籍や文化の違いを超えてお互いを理解し、尊重し合う多文化共生社会を構築するための諸問題を調査・審査・提言してもらった。「はばたけ未来へ京(みやこ)プラン」では「旅の本質を追求する観光戦略」「国際MICE都市」「5000万人感動都市」「歩いて楽しいまち」「観光案内標識アップグレード」「京都観光サポーター」等を多文化と観光の視点で挙げている。京都では中国TVドラマ「今夜相思雨」のロケが開始され中国観光客が増加している。また国籍別旅行消費額では、中国23.%韓国13.1%台湾11.4%%米国10.9%台湾5.4%%と上位五ケ国が全体消費額の63.%を占める。

京都市内外国人登録者数は平成23年末41,200人で減少傾向が続く。日本全体の外国人登録者数も2年連続減少している。これはリーマンショックでの大量解雇による帰国増、東日本大震災による帰国増、日本国籍取得による帰化と思われる。2060年の人口は現在の3割減で、高齢化率4割と超高齢化・人口減社会が予測されている。将来の「多文化人口構成」は一体どうなるか?外国籍市民の人口数は今後増加に転じるのか?外国籍割合が増え多文化市民社会になるのか?また外国籍市民高齢化率が増加し「多文化高齢化社会」になるのか?これらは日本の社会情勢(景気動向、雇用情勢)や各施策・制度(外国人・留学生受入、教育、福祉、少子化対策)次第であり対策が求められる。因みに、昨年韓国では「移民庁」新設検討を政府が発表したが参考になるのではないか。

外国籍市民等の地域社会参画や、自治体、商店街、PTAへの参加を図る必要がある。外国籍市民等の活力を活かした地域振興、多文化パワーを活かした仕掛けや仕組みづくりは、群馬県大泉町のブラジルタウンや神奈川県営いちょう団地の「多文化まちづくり工房」等が参考になる。今後外国人支援を行う個人・団体とつながり、顔の見える草の根レベルで外国籍住民が地域づくりの担い手として参加・参画できる仕組みを考えたい、と広い視点から報告がされた。

7、パネルディスカッション

第2部では会場からの質問も交えてパネルディスカッションが行われた。各パネラーは質問に応えつつ次のような発言をされた。

コーデネーター小澤さんからは報告補足含め各パネラーに質問が提起された。菅沼さんのデーターでのコリアンの観光客少ない原因は?また推進室から東九条はどう見えるのか?東九条マダンは継続・発展の為単に練習場所・保管場所を作るだけでよいのか?東九条で民族文化に触れる・経験する観光につなげる事は可能か?朴実さんの多文化推進センター提起でもっと民の力を活用する方向考えられないか?サロンをもっと活用し、そこで出来る事・出来ない事の仕訳が必要では?またニューカマーへのオールドカマーの支援・関わりとは?等であった。

菅沼さんからは、ネットワークサロンが地域福祉課所管になっているが京都市の多文化施策は推進室が責任を持って他部署に振っていく体制である事、また「東九条のまちづくり」では新大久保の韓流パワーのような新しい町おこしが参考にならないか等が述べられた。

劉さんは、コリアン観光客が少ない原因の1つとしてホテル・旅館が大阪・東京より高く、素通りされていないか、また東九条は鶴嘴・大久保と比してオールドカマーの街と認識されており、ニューカマーが入りづらく留学生の認識も薄い、もっとニューカマーの理解深める仕組みが必要ではないかと述べられた。

南さんは、外国人は日本の制度から漏れがちである、ニューカマーが直面している現実は、在日コリアンの歴史そのもの。外国人の在り方を尊重していこうとするとき、コリアンの歴史が参考になる。医療・福祉の研修をしてヘルパーを育成する中国帰国者2〜3世の支援活動はかってのエルファを見ているような問題意識を持つ、と語られた。

 村木さんからは東九条実態調査で、顔の見える関係を素早く作る必要性を再確認したことや、地域役員との顔繋ぎが出来た点が成果として挙げられた。またネットワークサロン活用に向け、東九条マダンを一日の祭りで終らせず、衣装・楽器・記録等をサロンで展示する、子供たちが民族文化に触れるたり話を聞いたりする機会を作り学校教育の多様化に繋げる等の模索もあるが、やはりやる人間が不足している現実もあると提起された。

 最後に朴実さんからは、この分科会の成果を今後の京都市での「多文化共生のまちづくり」活かしていきたいとの挨拶があり終了した。

 

 

 

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