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第42回人権交流京都市研究集会

  分科会

人権確立を目指す教育創造

 

                   2号館2201教室   

 

1.開会のあいさつ,方向付け

  ・竹口先生など発表者の紹介

  ・パネルディスカッションの討議の柱 など

 

2.実践報告「全国人権・同和教育研究大会」より

  景山 功一(小同研)

  安田 知史(中人研)

  竹口 等 (京都文教大学)

 

 (1)小学校からの報告

 小学校からは,竹田小学校でのA児との関わりを通した取組が紹介された。A児は入学当時から落ち着きがなく,友達との交流が難しいなどの課題が見られた。その背景としてA児との関わり方に悩む父親の姿や,その根本にある同和問題の残された課題が浮き彫りになってきた。この発表では,A児の6年間を振り返り,「学力と自信をつけ,友達とのつながりを感じられる生活を送る」を目標にスタートしたA児の小学校生活の始まりから学校生活の様子,父親から「先生,頼むわ」と言ってもらえるまでになった関係作り,父子関係の変容の経過について,背景にまで踏み込んだ教育の大切さが紹介された。また,関わった教師自身の変容についても語られた。

 

 (2)中学校からの報告

 中学校からは「弥栄教育がめざしてきたもの」と題して,弥栄中学校における「一人ひとりを大切にする教育」を目指した取組が紹介された。過去,学校が困難な状況であった中,徹底的に寄り添うことをスタートに,一人ひとりを徹底的に大切にする教育が始まった。その中で,生徒の問題行動の背景に同和問題があり生徒自身に責任はないことが改めて確認され,コミュニケーション能力の不足や将来展望を持てないことなど,具体的な課題も見いだされてきた。この発表では,統廃合によって141年の歴史を閉じる弥栄中学校の教育を総括する意味で,課題の解決に向けた中3進学促進教室での人権学習や,自分の思いを語れるようになるための人権劇,部落出身である生徒Aに対する仲間作りなどの取組について,具体的な実践の成果が紹介された。

 

 (3)大学からの報告

 大学からは,京都文教大学における「同和教育」等の実践事例が報告された。以下に,各科目とその内容をまとめる。

・人権論 

 人権侵害や差別に関する一般論や,様々な人権問題の中から関心の高いテーマについての講義がなされる。

・人権論演習 

 部落差別論に的を絞り,差別構造と性質について講義演習がされ,自己の問題意識に即した内容について、担当者を決めその意見発表と意見交換などによる演習。例えば,就職差別や生活実態などのテーマを扱う。

・総合演習 

 教員志望者として理解すべき部落差別の歴史的経緯や解放運動の流れなどを上記と同様の方法で演習する。例えば,小中学校の教科書に見られる部落問題に関わる記述などについて,教材研究の基礎となるような演習を行う。

・同和教育の研究 

 教員志望者を対象に「同和」教育の実践課題に対して主体的に行動できるような素養を身につけることを目的とした学習が行われる。また,「授業を受けた自分」から「授業を受ける前の自分」に手紙を書き,自己の変容を振り返りながら教員として必要な人権意識を高めていく。

 

 (4)質問等

・特になし

 

3.パネルディスカッション

  〜人権・同和教育の普遍化に向けて〜

  コーディネーター  竹口 等 (京都文教大学)

  パネラー      菱田 直義(部落解放同盟)

            景山 功一(小同研)

            安田 知史(中人研)

            林田 清文(小同研)

  討議の柱

  1.同和地区児童・生徒の実態

  2.学校としていかに関わるか

  3.課題として感じること

  4.同和教育の普遍化に向けて

 

  ディスカッション

   ○今日の発表を聞いて

・今日の発表におけるキーワードは「寄り添う」。親が寄り添い,友達が寄り添い,そのことにより,生徒に変容が見られる。(竹口)

・竹田小学校では,昨年まで6本の人権学習を全学年で取り組んできた。そこに,もう1本「将来展望」についての学習を取り入れたいと考えている。また,そこから中学校進学後の人権学習につなげていきたい。(景山)

・人権学習や人権劇など将来展望につながる取組によって,学力の向上は見られるのか。(竹口)

・取組によって誰かひとりの意識が変わり出すと,周囲の生徒たちも学習に意欲を持つようになる。いわゆるしんどい生徒たちも高校進学に向けて意欲を持って取り組んでいる。(安田)

 

   ○親の思いとは

・竹田小学校の発表にあった「自分と同じ遠回りはさせたくない。」という父親の思いもあったが,親の思いとはどういうものか。(竹口)

・自分の時は就学援助や補習授業,同和奨学金などの施策があった。自分自身が進学し就職していることが同和施策の成果といえるかもしれない。自分宛の部落解放同盟に関する郵便物などを妻は伏せておいてあったりする。子どもはおそらく部落に関して知っていると思うが,タイミングがつかめず,直接話すことはできていない。今,学習センターもなく施策もない状態で,地域の子どもたちはどうしているのか正直不安である。(菱田)

・近年大きく変わったと感じるのは,人と人との連帯と同和問題の認識。以前,学習センターでは学習だけでなく,人権について考えることができた。そこでは,地域の子どもたちだけでなく親や教師も含めて寄り添い,抱える課題を共有し連帯していた。今は,親同士のつながりも薄れ,親同士が悩みを相談し合うこともできていない現状である。学力保障には光が当たっているが,もう一方で同和問題認識が薄れていっているのではないか。(林田)

・最近,データなき同和問題論議がある。地域の実態が検証されないまま,議論が進んでいることに危機感を持っている。数少ない調査を見ると,学力格差が低年齢化しており,その背景には親の二極化がある。また,高校でも学習内容の二極化があり,高校進学「率」だけでは学力や進路保障の内実は見えないのではないか。さらに,進学してからも弱く挫折してしまい,卒業が難しい現実がある。(竹口)

・自分の家では,子どもたちは親の見えるところで学習させるようにしている。自分としては子どもとこのような関わりを持っている。(菱田)

 

   ○地域の連帯

・勤務地域では地区外居住が進み,地域のつながりが弱まってきているようだ。かつては,子どもが自分の問題として人権学習をしていたが,今は一般論として感じているようだ。また,以前は入学時に地区の出身であることを知っていたが,今は知らずに入学する。今,親の会を旗揚げし,親の連帯を高める取組を始めたところだ。(フロアより 鷹峯小 川端)

・地域を盛り上げて活性化していこうとすると,部落問題を正面からとらえなければいけないと考える。下京の統合を振り返ると,同和教育の取組を継承していくことはなかなか難しいようだ。人権学習を軸にした統合をぜひ実現して欲しい。普遍化と言いながら,同和教育が薄まっていっているような感じを持っている。(フロアより 崇仁教育連絡会 丸山)

・親の意識は変わっていないが,周囲の状況が大きく変化した。学校では,教職員の大きな入れ替わりの中で,若い先生が増えてきているので,親と語れる力量を育てる必要がある。以前のように施策の中で学び取っていくことがなくなった現状を考えると,校内でどう教職員を育てていくのか大きな課題であると思う。また,人権と子育てに関する新たな組織作りも必要だ。(林田)

 

   ○教育現場で求められていること

・若い先生はもう一度何をすべきか考えて欲しい。以前の同和行政経験者は肌で知っている。また,学習センターの卒業生で集まりたい思いがある。(菱田)

・カミングアウトできないのは,弱さのせいでない。外に出ると,改めて差別の厳しさや社会的な制約を知る。(竹口)

・若手が同和問題についての意識が低いと言われるが,これは教師全体で語り合いながら,研修していく問題だと思う。(景山)

・今回報告した動機は,今までの弥栄の取組を伝えていく必要があると感じるから。来年度,統合後に同じことを継続するのは難しいと思うが,その子に本当に必要な手だてを考えれば,最終的に同和教育は継承されると思う。(安田)

・同和問題について学習する中で,人権の様々な視点が生まれてくる。部落差別を学びながら,部落差別に何を学び,何を実践していくのか。部落に生まれたことを誇りに思えるような教育をしていきたいし,差別に対して同じ気持ちで汗をかき行動できるような市民を育てていきたい。今日発表のあった取組では,子どものポジティブな経験の大切さを感じた。それが,学力向上などにつながっていくと思う。(竹口)

 

4.閉会あいさつ

  

  

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